SENNHEISER HD 800 と DENON AH-D7000 を比較してみた 2回目
前回は私が感じる総括的な傾向のみに言及しました。
次は実際に音楽を聞いて比較してみます。
以下が視聴に使った機器です。
プレイヤー:OPPO BDP-103JP
同軸ケーブル:AVINITY AY-COAX-DG1M
ヘッドフォン:SENNHEISER HD 800
DENON AH-D7000
電源ボックス:CSE CX-63
電源コード:LUXMAN JPA-10000
XLO PL1500
※音楽ファイルをNAS上から再生
比較してみた
何曲か比べてみましょう。
まずは1曲目。
聴いたのはラストナンバーの「closing」
HD 800
やはり空間を感じます。
解像度はこれ以上 要求する必要性を感じさせない高さ。
各楽器が明快に鳴り響き、潰れた音なんか無いのでは・・・?
特にスネアドラムやハイハット等、乾いた楽器の音のリアルな再現性はAH-D7000より上でしょう、間違い無く。
低音は割れずに気持ちよく出ています。
反面、音を大きくすると高音やボーカルの「サ行」「タ行」が少し刺さって気になりますが、もしかしたら長時間のエイジングにより解消されるかもしれません。
ボーカルは少し乾いて軽い感じもします。ただ中央から極度に主張することなく聞こえ、音楽全体としての調和はしっかり取れています。
本当に総合力が高い。
AH-D7000
スタートからまず違うのがボーカルの近さです。
声が間近に迫ってくる迫力はHD 800とは別の良さ。
またHD 800ではボーカルが少し乾いた感じで軽いと思いましたが、AH-D7000では力強さと重みが出ています。
そしてやっぱり重低音の凄いこと。
HD 800の後に聞くと、低音が胸にまで響いてきます。
かなりの低音寄りなので、中・高音の鮮明度はHD 800に当然 及びません。
もうその辺りは潰れて、わけ分からない音も。
高音が耳に刺さらないという利点はありますが・・。
空間の再現性は無いので、音は本当にステレオよろしく、楽器は真横一直線で鳴っている感じ。それが音の聞き分けが出来なくなる(良くない意味で)一助になっているのかもしれません。
ただ最大ともいえる特徴の重低音が面白い効果を。
この歌のように、切ない恋心の歌詞と音調をAH-D7000で聴くと、映画館で作品を鑑賞した後の流れるエンディングを聴いてるかのようです。
これはAH-D7000ならではの個性でしょう。
この曲を繰り返し聞けば聞くほど、その重厚な音に引き込まれていき、最初はHD 800と比べていましたが、比較が終わる頃にはAH-D7000でしか聞く気がしなくなりました。
ハマる曲には驚異的な高依存性ヘッドフォン。
続いての曲はこちら。
WAV 192KHz/24bitがe-onkyo musicで販売されています。
使っているのはハンドベルのみ。66個の大編成で奏でてますよ。
クラシックでも有名な曲が多いため、イージーリスニング&かけ流しのヒーリングサウンドとして便利です。
その中からパッヘルベルの「カノン」と、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」を聴きました。
HD 800
始まりの直後から、ハンドベルの繊細な音が高解像度、且つ適度な広がりの空間から鳴らし出され、これは良い。
「カノン」の、美しくも郷愁ただよう音律とハンドベルがマッチングしている音源ですが、それをHD 800で聴くと更に空間表現も加わり、文句の付けようがありません。
「結婚行進曲」は後半で盛り上がりを見せますが、その時にどうしても高解像度ゆえの高音の響きで、人によっては少し頭が痛くなるかもしれません。
AH-D7000
HD 800と比べると、空間の表現性が無いため、どうしても一歩劣って聞こえます。
またHD 800よりノイズが目立つ。
これが不思議で、普通なら解像度が高いHD 800がnoisyに聞こえそうですか、何故かそうではありません。
ハンドベルが力強いです。とても。
多分、演奏者はこんな意図で奏でてないんだろうな、みたいなw
ガンガン振り回しているのが目に浮かぶようです。
2曲ともに音の響き自体は良いです。ベルの余韻もしっかり聞き取れます。
ですがこの音源のように、楽器の繊細さと細かな表現が必要になると、HD 800の前では分が悪いですね。
この曲をAH-D7000で聞くことはもう無いでしょう・・。
HD 800の圧勝です。
最後はこれで。
カーペンターズの曲を平賀マリカさんが歌っています。
e-onkyo musicでは96KHz/24bitの解像度で販売されており、ノイズを感じさせない良好な音質が気に入っています。
この中から「Yesterday once more」と「Top of the world」をチョイス。
HD 800
「Yesterday once more」
ピアノが不自然なく重厚に鳴り響き、スタートからこの音楽の世界に引き込まれます。
ボーカルはとても自然に中央から聞こえます。
息づかいや細かな表現もしっかり聞き取れ、不満を感じません。
ラストまで歌に浸れ、何度でも聴けます。
「Top of the world」
ハイハットの音は流石です。
乾いて聞こえますが、私は大の好み。
ギターも電子オルガンも、何かに紛れる事なくハッキリ聞き取れます。
ボーカルはやはり主張されず、自然に中央から流れており、他の音を大きく消すような事はありません。
そのためか最後まで、声も楽器も全ての音を楽しめて聞き終わる事ができました。
AH-D7000
「Yesterday once more」
のっけから低音が出すぎて割れてますw 割れてますよマリカさんw
ですがボーカルは大きく響き、何より艶めかしく聞こえます。
これはHD 800よりAH-D7000のほうが良い。
各楽器の表現はHD 800に及ばないのですが、ボーカルの良さがそれを気にさせないぐらいに、声の生々しさが際立ちます。
「Top of the world」
これもボーカルが艶めかしく聞こえて良いのですが、他の楽器の低音が強すぎて、ボーカルを邪魔しているように私は思えます。
Yesterday once moreの時はそのように感じなかったのですが・・。
改めて2曲を聴き直すと、Yesterday once moreはボーカルの音階自体が低いので、楽器の低音に負けず聞こえているようです。
対してTop of the worldのボーカルは音階が高いのか、楽器の低音に阻害されてしまう。
ただ後半になるとその状態にも慣れてきて、最後は楽器の重厚な低音とボーカルの元気良さが調和して、気持ちよく聞き終わる事は出来ました。
総合的に考えると、このアルバムを聴くなら今後はHD 800です。
以上が数曲を聴いてみた感想です。
あるゆるジャンルをそつなくこなすのは間違い無くHD 800でしょう。
ただ曲によってはAH-D7000の重厚な出力にやられてしまい、これ以外では聞きたくない、と思わせる中毒性を持っていました。
AH-D7000がドストライクになる方は、恐らく他のヘッドフォンが使えなくなります。
本当はどちらかを売ってヘッドフォンは一つにしようと考えていたのですが・・・
それぞれの魅力があって、売るに売れません・・・・